(2017年11月5日号)  PDF版
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主な記事から
 イラストレーションて〜  秋の夜長に   来年も行きたい!

 
 美術本特集 
 
イラストレーションて言葉は日本にはなかったんだぜ
 
 たばこと塩の博物館で10月22日まで開催されていた「和田誠と日本のイラストレーション」
展に行ってきた。和田さんの仕事と交流を中心に、日本のイラストレーション史がコンパクト
にまとめられたよい展示であった。
 熱烈な和田ファンを自任しているが(本紙カットはもちろん和田さんの真似です)、原画をじ
っくりと見るのは今回が初めて。もはや伝説級の日宣美賞一等受賞作「夜のマルグリット」、
無報酬で描き続けた新宿日活名画座のポスター、装丁・デザインをした書籍やレコードジャ
ケットの数々、今年通算2000作を超えた週刊文春表紙絵などの代表作をはじめ、幼き日の
絵や高校時代の「先生の似顔絵による時間割」などの貴重な展示、アニメーション作品、制
作風景の映像も興味深い。
 そうそう、忘れてならないのは本博物館のテーマである「たばこ」。誰もが見覚えのある(嫌
煙の今の世の中では無理かな?)ハイライトのパッケージデザインは和田さんだ。紫煙をくゆ
らせるハンフリー・ボガート、口から吸った煙を背中から噴き出すくじらなど、たばこにまつわ
る作品がまとめられたコーナーも楽しい。
 宇野亜喜良、横尾忠則、安西水丸、湯村輝彦、矢吹申彦、南伸坊ら和田さんと交流・影響
のあるイラストレーターの作品も時代の流れとともに紹介されている。平凡パンチ創刊号の
大橋歩による表紙絵の原画が見られたのも感動もの。
 イラストレーションという言葉は、彼らの活躍がなければ日本に根付かなかっただろう。その
中心であり、現在もそうあり続ける和田誠。末永くお元気で。 (沢)
 
※残念ながら本展の図録は書店流通なし。ここでは今年初めに復刊された『もう一度倫敦巴
里』を挙げておきたい。パロディの神髄が味わえる名著だ。
もう一度倫敦巴里
和田 誠 著
●ナナロク社
●170P 
●ISBN 9784904292716
●本体2,200円+税

・初心者向けです
 東京国立博物館で運慶展が開催されています。
 「運慶」については東大寺の仁王像を作った人、教科書で読み知った知識しか私にはありま
せん。仏像は見て美しいと思っても、普段は興味を持って観察しているわけではなく知識もあ
りません。「運慶」とはどういう人であったのかと思い、手に取ったのが『マンガでわかる天才
仏師!運慶』です。
 仏像の特徴、造られた時代背景をマンガと共に初心者向けにまとめてあります。本の帯に 
記載されている通り、「運慶のことがやさしくわかる!30分で運慶の生涯、イッキ読み!」で
きます。歴史に興味を持つ一歩としてもお薦めの一冊です。 (京) 
マンガでわかる天才仏師!運慶
田中 ひろみ 著
●JTBパブリッシング
●128P 
●ISBN 9784533120831
●本体1,400円+税
 

国のは私の宝!!
 京都国立博物館で開催されている国宝展に行ってきた。日本全国に散らばる国宝が一挙に
集まるまたとない機会。お目当ては曜変天目茶碗。最高級の天目茶碗で外観は凛とした漆黒
だが、内側を覗くと大小様々なキラキラと輝く斑紋が現れる。まるで星が輝いているよう。「欲
しい。」とつぶやいたら千年働いても買えません、と周りに一笑された。仕方がないので『週刊 
ニッポンの国宝』四号(630円!)を購入して写真を眺める毎日だ。
 さて、美術品をテーマにした小説家といえば最近では原田マハが人気だが、2015年に『神
の値段』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した一色さゆりも今後要注目の作家であ
る。原田マハ同様、学芸員としても活躍している彼女。受賞作では現代アートのマーケット事
情を題材にして、素人には立ち入ることのできない世界を見せてくれた。
 そんな一色さゆりの新作が『嘘をつく器』である。再現不可能と言われている曜変天目を作り
上げた陶芸家の死を巡るミステリー。さらりと読めて気軽にアートの世界に浸ることができる秀 
作だ。 (斉) 
神の値段 嘘をつく器
一色 さゆり 著
一色 さゆり 著
●宝島社
●368P 
●ISBN 9784800264893
●本体630円+税
●宝島社
●297P 
●ISBN 9784800275554
●本体1,380円+税
 

名作はあせない
 先日、東京に行く機会があり「はいからさんが通る」原画展を見に美術館に行った。連載終 
了から今年で40年の節目の年で11月には新しく劇場版アニメにもなる名作だ。年月が経っ
た今なお引き込まれるストーリー展開と画力に色あせない魅力を再認識させられた。 
 時は大正、ハイカラ娘の紅緒は突然伊集院少尉が婚約者だと聞かされる。じゃじゃ馬な紅 
緒を中心に騒動が巻き起こり、少尉が戦地に行ってしまったり、紅緒が出版社で働きだした 
りと時代に翻弄されつつも負けないで生きていくラブコメディだ。 
 いつの時代もパワフルに生きる女性を、著者はどの作品も素敵に描いている。原画展では 
同時に当時の女性達の洋服の展示や職業についての説明などもあり、実際の背景がよく分 
かるようになっていて大変見ごたえがあった。
 40年以上も第一線でいられる事に毎回この中田図書新聞の原稿だけでも四苦八苦してい 
る身とすれば脱帽するしかないと思うのだ。 (郁)
はいからさんが通る 1
大和 和紀 著
●講談社
●224P 
●ISBN 9784063931235
●本体500円+税

 
秋の夜長に
 
 秋になると、少し難しくてもいいから、読みごたえのある本を選んでしまう。私が手に取ったの
は『世紀末芸術』。最近オープンした富山県美術館でクリムトの作品を観た影響かもしれない。
ずいぶん前に読んだ本だが、もう一度読み返したくなった。
 本書を読むまで印象派以降の芸術家、例えばウィリアム・モリスやビアズリー、クリムトの位
置づけがいまひとつわからなかった。しかしこの本を読むと、19世紀末に多種多様な芸術家
が現れた背景がよくわかる。
 はじめは未知の世界だった世紀末芸術の作品たちとの距離が、読後にはグッと近くなる。美
術館に、会いに行きたくなった。
 残念ながら、本書は現在品切れとなっている。しかし、同じ著者が新書で『カラー版 近代絵
画史(上下)』を出している。コンパクトながら、ロマン派・印象派・世紀末絵画・シュルレアリス
ム等、近代美術が一通り網羅されている。美術館へのお供にいかがだろうか。 (夏) 
近代絵画史 上 近代絵画史 下
高階 秀爾 著
高階 秀爾 著
●中央公論新社
●212P 
●ISBN 9784121903853
●本体840円+税
●中央公論新社
●242P 
●ISBN 9784121903860
●本体860円+税

術館に行きたい!!
 『楽園のカンヴァス』 『ジヴェルニーの食卓』 『暗幕のゲルニカ』等、アート小説で知られる 
小説家・原田マハさんの新書『いちまいの絵』。自身が強く影響を受けた絵画厳選26点より、
画家の思い、制作の背景、そして自身の体験を綴っています。単なる絵画のガイドブックでは
ありません。「下手くそパンチを思いっきり浴びた気分」の子ども時代のピカソとの出会いなど
自身の絵画にまつわるエピソードとともに記されており、著者と一緒に絵画を見て回っている
気分になります。ああでも、やっぱり絵画は生で観たい!!この秋は美術館巡りの旅をして
みようかしら。 
楽園のカンヴァス ジヴェルニーの食卓
原田 マハ 著
原田 マハ 著
●新潮社
●440P 
●ISBN 9784101259611
●本体670円+税
●集英社
●276P 
●ISBN 9784087453270
●本体560円+税
暗幕のゲルニカ いちまいの絵
原田 マハ 著
原田 マハ 著
●新潮社
●276P 
●ISBN 9784103317524
●本体1,600円+税
●集英社
●253P 
●ISBN 9784087208887
●本体900円+税
 

すべてのはアートに通ず
 2008年に広島市の上空に飛行機雲で「ピカッ」という文字を書いたインスタレーション。渋
谷にいるネズミを捕獲し、ピカチューのペインティングを施した作品。2011年の福島第一原
発事故直後に、渋谷駅構内の岡本太郎「明日への神話」の片隅に原発事故の絵をゲリラで 
付け加えた作品。最近では、トランプ大統領就任直後にメキシコ側のアメリカとの国境沿い
にツリーハウスを建設したプロジェクト等々。一貫して都市や社会に対して介入する作品を
発表し続けている東京で結成された六人組のアート集団「Chim↑Pom(チン↑ポム)」。『都
市は人なり』は、歌舞伎町の取り壊し直前の振興組合ビルで行われた展覧会及びイベント
「また明日も観てくれるかな?」から、高円寺のキタコレビルの地下に歌舞伎町のビルの瓦
礫を埋め、建築家・周防貴之との協働により、そのうえに道(公共圏)を通すまでの一連の活
動「Sukurappu ando Birudoプロジェクト」の全記録です。 
 2020年の東京オリンピック開催に向けて急速に再開発が進む中、ストリート発で作品を
発表してきた彼らが今の東京を記録として残しながら、行政主導ではなくDIYで「道」という公
共圏に関わる作品をつくったと言うアイデアには脱帽させられました。この「道」は今後も常
設されるそうなので、オリンピック開催時にはどのような状態になっているのか楽しみです。
 (岩) 
都市は人なり Sukurappu ando Birudoプロジェクト全記録 
Chim↑Pom 著
●LIXIL出版
●227P 
●ISBN 9784864800310
●本体2,800円+税
 

気すぎるヤツら
 卒業生の半数が行方不明になる。まるでホラーか都市伝説のような大学、それが東京藝大
である。『最後の秘境 東京藝大』は、そんな藝大に通う奥様を持つ小説家が、藝大を案内し
てくれる。
 まず入学するところからドラマがある。高校時代に、答案用紙においしいカレーの作り方を 
書いて東大に合格した猛者の噂を耳にしたが、藝大の試験と採点はもはやその次元にはな
い。どんな試験かはぜひ読んでみてほしい。
 入学してからも、彫刻する前に道具を作るなど、とにかく彼らは本気である。人間はこんな
にも好きなことに本気になれるのか。何だか愛おしくなってくる一冊。 (大)
最後の秘境 東京藝大
二宮 敦人 著
●新潮社
●286P 
●ISBN 9784103502913
●本体1,400円+税
 

「分かる」しみ
 ピタゴラスイッチでお馴染みの佐藤雅彦さんの新刊『新しい分かり方』。
 「分かって腑に落ちる」こともあれば、「分かるけど、なぜ?」や「分からない。どうしてだ?」
(これを「新しい分からない方」と呼ぶ)など、頭の中がぐるぐる二転三転する感覚に捉われま
す。
 最大の特徴は「分かる」の伝え方。イラストや写真が多く用いられており、それらの作品を
楽しみながらゲーム感覚で読み進めることで、今までにない読書体験ができる一冊です。 
 さて、私は皆様に本書を読んで感じた「分かり方」をお伝えすることができたでしょうか。興 
味のある方は是非、ご一読をオススメします。 (み)
新しい分かり方
佐藤 雅彦 著
●中央公論新社
●265P 
●ISBN 9784120050084
●本体1,900円+税
 

BIGな
 のせ猫ファミリーのベストショットたっぷりの写真集がBIGになって発売されました。ダイナ
ミックに、そして繊細に野菜を頭の上に乗せられる写真には根っからの犬派の私もメロメロで
す。芸術的な乗せっぷりとのせ猫たちの表情とのギャップがたまりません。
 この乗せっぷりは愛です。生来の気性もあると思いますが、飼い主さんとの信頼関係がな
いとこんなに穏やかで心和む写真は撮れないでしょう。
 来年は戌年。年賀状に我が家の愛犬の可愛すぎる写真を!と日々ベストショットを狙って
いますが、こんな芸術的な写真は撮れません。愛情では負けないと思うのですが・・・。 
 (野) 
のせ猫・BIG
SHIRONEKO 著
●宝島社
●95P 
●ISBN 9784800276278
●本体800円+税
 

 
 大人のためのアート本 
 
魔法の本、POP−UP!
 
 仕掛け絵本というとなんとなく子供向けの商品というイメージが先行しますが、大日本絵画
の『不思議の国のアリス』に出会ったときはあまりの素晴らしさと驚きとで大興奮したのを覚
えています。
 作者はロバート・サブダ、またの名を紙の魔術師。魔術師の名にふさわしく、彼の作る仕掛
け絵本は繊細で精巧であり、かつ大胆。書籍という平面に生み出された紙の立体芸術です。
トランプが宙を舞うページがまさしくそう。ページの隅にある小さな仕掛けも手が込んでいて
飽きさせません。
 「アリス」以外の世界の名作やクリスマスをテーマにした作品も出版されていますが、残念
ながら海外生産のため、品薄・品切が続いています。 
 どこかで彼の本に出会えたら、そっと優しく開いてみてください。ページをめくるたびに、紙
とはさみが作り上げた芸術があなたの目の前に現れます。 (藤) 
不思議の国のアリス
ルイス・キャロル 原作 ロバート・サブダ 作
●大日本絵画
●12P 
●ISBN 9784499280860
●本体4,000円+税
 

大人の本です
 「せかいいちのねこ」の続編。『いらないねこ』。「いらないねこ」なんて、タイトルだけで切な
いわ〜と思いながら読み始めました。物語は主人公であるぬいぐるみのニャンコが捨てられ
ていた子猫を拾い、まわりの生き物たちに助けられながら奮闘し育てるという心温まるストー
リーです。 
 物語もほっこりするのですがヒグチユウコさんの絵がまたいい!猫たちはスタイリッシュな
服装でしっかりした顔立ちなのですが、主人公のぬいぐるみのニャンコは文字通りぬいぐる
みなので、他の猫たちとはまた違うタッチで描かれ、とても愛らしい姿をしています。他にも幻
想的な生き物たちが登場して楽しませてくれます。本書の付録にクリアファイルが封入され
ていましたが、もったいなくて使えそうもない私です。 (治)
いらないねこ
ヒグチ ユウコ 著
●白泉社
●119P 
●ISBN 9784592762157
●本体1,400円+税
 

ぬらない大人のぬり
 単に色塗りを楽しむだけでなく、パズルになっていたり、名所を知ることができたり、自律神
経を整えたり・・・。「おとなの塗り絵」は楽しみ方が盛りだくさんで、お店の人気商品です。し
かし、何色をぬれば綺麗になるのか不安に思う方もいらっしゃるのでは?
 そんな人におすすめなのは『スクラッチアート』です。付属の専用ペンでなぞって削ること
で、色鮮やかなイラストが浮かび上がる新しいぬり絵です。線をなぞるだけでなく、新しく描
き足すこともでき、仕上がりは描き手次第なのが魅力のひとつ。なによりも簡単なので、小さ
なお子様からご年配の方まで幅広く楽しめます。新作はディズニープリンセスです。削って
キラキラ楽しいぬり絵にぜひ挑戦してみてください。 (津)
大人のためのヒーリングスクラッチアート
Disney Princess
isotope 著
●学研プラス
●5P 
●ISBN 9784057506357
●本体1,500円+税
 

見えない芸術と世界
 美術館や博物館にも展示されず、そのままでは目にも見えない。でもとても美しいものが
あることを誰でも知っていて、文化性も高い。
 そんな、不思議な芸術品みたいに素敵なもの、なんだかご存知ですか?そう、「ことば」で
す。
 日本語ではとても一言で言い表せないような珍しい世界のことばをやさしく解説してくれる
『なくなりそうなせかいの言葉』は西淑氏の温かみのあるイメージイラストとも相まって、知ら
ないことばなのにスラスラと頭に入ってきます。読み終える頃には、まるで世界を旅したか 
のような心地よい満足感と充実感。
 しかし、ふと改めて表紙を見てみると、なんとも切ない気持ちになってしまいます。この本
に載せられている言葉はすべて「なくなりそうな世界のことば」なのです。
 目に見えないこの芸術品たちが、本当に世の中からなくなってしまうかどうかは、読者の 
私たちにかかっているのかもしれません。 (酒)
なくなりそうな世界のことば
吉岡 乾 著
●創元社
●112P 
●ISBN 9784422701080
●本体1,600円+税
 

 
 新刊・新譜・話題の本情報 
 
来年もきたい! 
 9/23・24に岐阜県の中津川で開催された「THE SOLAR BUDOUKAN」という音楽フェ
スに行ってきました。ここ数年、8月は黒部のホットフィールド、9月は富山城址公園のビート
ラムを数少ない夏のイベントとして楽しみにしていたのですが、今年は残念ながらビートラム
が中止のため、初めて中津川まで足を伸ばしてみたのでした。
 SOLAR〜の名のとおり、ライブ運営に関わるすべての電力が太陽光発電でまかなわれ
ているそうで、富山・石川からも気軽に行けて(防寒対策は必要ですよ)、幅広い年代やジャ
ンルの音楽が聞ける、かなりおススメのフェスでした。
 お目当てのアーティストはもちろんどれも楽しかったのですが、それ以外にも、久々に聞 
いたGRAPEVINEが非常に良かったので、最新アルバム『ROADSIDE PROPHET』は
是非とも聞いていただきたいところです。
 そして、今年の個人的ハイライトは初日のトリを飾った吉川晃司のシンバルキック!足、 
ものすごく上がっていました。 (都) 
ROADSIDE PROPHET
GRAPEVINE
●ビクターエンタテインメント
●46分
●本体3,000円+税

再始動ム。
 近年、解散・引退と復活の波が押し寄せております。SMAPの引退の衝撃も抜けやらぬ
ところに来年安室奈美恵さんが引退することは耳にされた方も多いのではないでしょうか?
一時代を築いたアーティストが音楽業界からいなくなるというのはなんとも言えぬ寂しさが
あるものです。そんな中でハイスタやイエモンなどのように復活をしてくれたバンドも最近増
えてきております。自分の若い時代の中に残る懐かしい声や名前を聴くと、一緒に昔のこと
も思い出し、なんだか気持ちがほころびます。それが特段ファンと言うわけではなくとも。音
楽とともに過去を思い出す。それだけ音楽と言うものは人生に根付いており、そういう時音
楽とまたアーティストの凄さを感じます。今後も復活アーティストを期待したいです。
 (湯)

将棋のかる人ほどオドロク結末!!
 藤井四段の活躍で将棋がブームになっている。私も小中学生の時はよく指していたが、
いつの頃からか指さなくなってしまった。それでも、日曜午前のテレビのNHK杯や北國新
聞棋王戦の記事をたまに見ると夢中になることもある。そんな私なので、将棋関連のミス
テリーである『盤上の向日葵』を見た瞬間に読もうと決めた。
 冒頭は殺人の容疑者である天才棋士と壬生六冠が竜昇戦(それぞれ羽生二冠、竜王戦
がモデルと思われる)の第七局の大局シーン。そこからある銘駒を中心に過去と現在の話
が交互に進み、真実が明らかになっていく。
 将棋を知らない方に伝わりづらいことが残念ではあるが、この物語で一番の衝撃は第七 
局の結末である。将棋が好きな方にはぜひ、好き故に味わえる衝撃を受けて欲しい。 
 (大)
盤上の向日葵
柚月 裕子 著
●中央公論新社
●563P 
●ISBN 9784120049996
●本体1,800円+税
 

上品でチャーミングなの巨人
 昨年秋に柏崎市で開催された講演会に出掛け、ドナルド・キーン氏本人を目にすることが
できた。御歳95歳。はじけるような笑顔は華やかで、大きな碧い眼はキラキラと輝いており
未だ瑞々しい印象を放っていた。
 キーン氏といえば、日本文学研究の世界的第一人者だが、伝統芸能をはじめとする日本
文化全般にも深い造詣をもつ。巨大な学識と経験に立脚した分かりやすい作品解説によっ
て、はじめて能や文楽、狂言の魅力を知った人も多いと思う。オペラやクラシック音楽との
比較論も痛快で大変興味深く、著作を読んでいると探求心の枝葉が無限に伸びていくよう
に感じる。 
 『別冊太陽 ドナルド・キーン』はキーン氏の膨大な功績を辿る上でとても便利なガイドブッ 
クである。尽きること無い知的欲求とエネルギーに圧倒されつつも、大きな日本愛を感じて 
温かい気持ちになる。 (坂)
別冊太陽 ドナルド・キーン
別冊太陽編集部 編
●平凡社
●160P 
●ISBN 9784582922547
●本体2,400円+税

お知らせ 
■掛尾本店フェア情報
「カズオ・イシグロ」 「新潮クレストブックスフェア」 「ポピュラー・サイエンスの愉しみ」 etc.
 
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 小松大領店 @BooksDairyo 
 

 編集後記
 今号に二回登場した作家、原田マハさんの最新作『たゆたえども沈まず』は、日本人画商・
林忠正と画家・ゴッホの出会いを描いた小説。この林忠正はなんと富山県高岡市出身。日
本の美術品をパリに広め、印象派に影響を与えた画商です。興味が湧いた方はぜひお近く
のブックスなかだでお買い求めください!