(2017年4月11日号)  PDF版
(back numberで表示されている2013年10月15日号までの税込金額は、消費税率5%で
計算されています。)
  

特別号
 恩田陸さんは小学生の頃富山に住んでおり、当時市電に乗ってピアノ教室に通われて
    いたそうです。富山での経験が今回の作品に活かされていると思うと感慨深い!さぁ皆
    で恩田陸さんを応援しよう!

 
祝 本屋大賞受賞 『蜜蜂と遠雷』のここがすごい!!
 
 何といってもそれぞれの楽曲の描写が素晴らしい。生の演奏を聴いた時の、涙が出そうな
身震いするような感覚を文章から味わえる。また、ピアノコンクールに関わる様々な人々に
スポットライトを当てたことでテンポよく場面転換が進み、ラストまで飽きさせないエンタメ作
品に仕上がっている。改めて著者の引き出しの多さを実感させられた。
 読了後も頭の中でピアノが鳴り続ける、そんな余韻に浸れる一冊。
 (斉)
 ともすれば自分とはかけ離れたものに思えるピアノコンクールの世界を、身近に感じさせ
ながらするすると読ませる。登場人物にしっかりと個性があり、実在しているかのように生き 
生きと書かれているためだろう。
 才能や競争といった残酷にもなり得るテーマを扱っており、業界の厳しさや職業にする難
しさを繰り返し描写している。それでいて下品にならず、全体に繊細な美しさがあるのは、著 
者独特の柔らかく穏やかな文章のおかげである。 
 (仁) 
蜜蜂と遠雷
恩田 陸 著
●幻冬舎
●507P 
●ISBN 9784344030039
●本体1,800円+税
 

読むと絶対にきたくなる! 『蜜蜂と遠雷』曲紹介
 『蜜蜂と遠雷』の作中では、たくさんのピアノ曲が取り上げられています。その中から私の
独断で何曲か紹介したいと思います。
 「この選曲はとんでもない天才かとんでもない阿呆かのどちらかだ」とマサルがバッサリ
斬っていた、ジンの一次予選曲のバッハ・平均律クラヴィーア曲集第一巻第一番は、
クラシック入門CDにも収録されている有名曲。同じくジンの三次予選曲のサティ・あなた
がほしいも、聴いたら「ソレね!」と思う超有名曲です。 
 ジンと亜夜が、月夜に二台のピアノでやったセッションは、ドビュッシー・月の光から始ま
「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」に移り、そして「フライ〜」になんとなく似ているという 
ートーベン・ピアノソナタ第十四番「月光」二楽章に入りそのまま三楽章へ、三楽章の
途中から「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」の並奏がはじまり「ハウ〜」に合流しフィニッシュ。滅茶 
苦茶だが、即興の天才二人が心の赴くままに弾きまくる様子は、楽器が弾けない自分には 
眩しい。 
 亜夜の本選曲のプロコフィエフ・ピアノ協奏曲第二番と、マサルの本選曲のプロコフィ 
エフ・ピアノ協奏曲第三番。二人の共通イメージは、第二番は暗黒街の抗争を描いたノワ 
ール映画、第三番はスター・ウォーズのようなスペースオペラ。確かにサントラっぽい感じも。 
 紹介できなかった曲が多いのですが、最後に今回いろいろ聴いてみた中で私のお気に入 
りは、明石の三次予選曲のシューマン・クライスレリアーナ。ちなみに作中ではほとんど 
触れられてないですが。 (牧) 

 
恩田陸作品を愛する書店員が集まりました。
 
 恩田陸初心者にまず最初に読んでほしい一冊。青春・ミステリー・ホラー・色んな面が垣間
見える。 (津)
六番目の小夜子
恩田 陸 著
●新潮社
●339P 
●ISBN 9784101234137
●本体550円+税
 

 2005年本屋大賞受賞作。夜を徹して歩くという、どう考えても壮絶に辛いことをやってみた
いかもしれないと血迷わせるほどに出てくるエピソードが切なくて読ませる。大人になって読
んでもいいけれど、学生時代に読みたい一冊。 (大)
夜のピクニック
恩田 陸 著
●新潮社
●455P 
●ISBN 9784101234175
●本体710円+税
 

 街の名士の家で起こった大量毒殺事件。生き残った盲目の美少女は何を語るのか?金沢 
と思われる街並みが描かれているのも魅力のひとつ。 (斉) 
ユージニア
恩田 陸 著
●KADOKAWA
●420P 
●ISBN 9784043710027
●本体629円+税
 

 丘の上にある屋敷を舞台にしたゴシックホラー。連作短編集だからと気軽に読みはじめる 
と、気付いた時にはもう恐怖にとりつかれている。夜に読むと恐くて眠れなくなるので気をつ
けて! (子)  
私の家では何も起こらない
恩田 陸 著
●KADOKAWA
●224P 
●ISBN 9784041046401
●本体560円+税
 

 中に入る人間は消えてしまうと言われている遺跡についての謎を解明する話。ぞわぞわす 
る怖さが癖になる。中学生の時に読んで今でも引きずる位にトラウマになりました。 (山) 
MAZE
恩田 陸 著
●双葉社
●264P 
●ISBN 9784575517712
●本体556円+税
 

 とある男女がアパートの一室で過ごすたった一晩の物語。舞台装置がシンプルなぶんグイ 
グイ読ませる上手さが際立つ。真実が絶妙なタイミングで明かされていくミステリのドキドキ感
はありつつも、抒情的で美しい文章は“文学を読んでいる”という満足感あり。
 「女には、自己憐憫という娯楽があるのだ。」心理描写の容赦無さが怖い、恩田ワールド全開 
の作品。 (坂) 
木洩れ日に泳ぐ魚
恩田 陸 著
●文藝春秋
●298P 
●ISBN 9784167729035
●本体620円+税
 

 編集後記
 装丁の美しさも本書の魅力のひとつ。草原を思わせるビジュアルの表紙にうっとりさせられま
す。そしてカバーを外してみるのはぜひ読了後に。そうすれば、更なる感動が待っているはず 
です。