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主な記事から
 2016私のBEST3  私の挫折本   最新、成政研究

 
2016年私のBEST3
 
 まず、『少年の名はジルベール』を。「風と木の詩」で少女漫画界に革命を起こした竹宮惠
子の半生記。彼女は天才肌で自信満々だったろうと勝手なイメージを持っていた私は、彼女
にも認めてもらえない時代があり、同時代のスター漫画家・萩尾望都への憧れや嫉妬や苛
立ちで心を病む程に苦悩したというエピソードに衝撃を受けた。大御所になった今、悩めるク
リエイターに向けて若かりし頃の苦い思い出を告白した著者に拍手を送りたい。
 二冊目。『罪の声』はグリコ・森永事件をベースとした未解決事件を追うミステリ小説。構想
十五年。元新聞記者でもある塩田武士の執念が生んだ傑作だ。果たして犯人は何者なの
か?という興味から読み始めたが、物語が進むうちに事件に関わった人々、特に犯行声明
に利用された子どもが大人になった今どんな思いで暮らしているのか・・・。と第三の被害者 
ともいえる人々のことを考えずにはいられなくなった。新たな視点から未解決事件を振り返 
ることができる作品。 
 最後にヤングアダルト向け海外小説を。『堆塵館』は十九世紀ロンドンの巨大なゴミ捨て場 
に屋敷を構え、不思議な掟に従う一族の物語。とある理由で一族から疎まれている少年クロ 
ッドと、屋敷に召使としてやってきた少女が出会い一族の運命が大きく変わり始める。とにか
く変。でも変テコなものこそ魅力的だと改めて気づかされる。読書家はもちろん抑えていると
思うのでここでは少年少女におすすめしたい。読書の楽しみがぐっと増す一冊になるだろう。 
 (子)
少年の名はジルベール 罪の声
竹宮 惠子 著
塩田 武士 著
●小学館
●237P 
●ISBN 9784093884358
●本体1,400円+税
●講談社
●418P 
●ISBN 9784062199834
●本体1,650円+税
堆塵館
エドワード・ケアリー 著
●東京創元社
●427P 
●ISBN 9784488010553
●本体3,000円+税
 

オールジャンルベスト
 一冊目は、『ゼロヴィル』です。圧倒的な想像力で物語を繰り広げる「幻視の作家」とも呼
ばれる現代アメリカ文学の重要作家の一人、スティーヴ・エリクソンの新作です。難易度が
高めで敷居の高い作家とも言われていますが、本作は細かい章仕立てとスピード感のある
展開であっという間に読み切ってしまいました。 
 二冊目は、『クラブ/インディレーベル・ガイドブック』です。去年はApple Music、今年は
Spotifyなど定額制のストリーミング配信による音楽サービスが日本でも開始され、音楽と 
接するチャンネルが更に変化してきています。また海外のクラブ/インディ音楽界隈では1 
アーティスト1レーベルとも言える状況で、玉石混淆な状態です。そのようなテン年代の地 
下音楽事情を「レーベル」の側面から整理したディスク・ガイドです。
 三冊目は、『写真の新しい自由』です。雑誌「コマーシャル・フォト」で連載されている「流行 
写真通信」の約五年分の記事と現代の著名写真家へのインタビューを加えて、大幅加筆修 
正したものが本書です。テン年代の写真史を追いながら、現代の写真家が何を考え、どの 
ような態度で写真に接しているのかが紹介されており、読み応えのある一冊となっています。 
 (岩) 
ゼロヴィル クラブ/インディレーベル・
ガイドブック
スティーヴ・エリクソン 著
三田 格 著
●白水社
●462P 
●ISBN 9784560084892
●本体3,400円+税
●Pヴァイン
●286P 
●ISBN 9784907276485
●本体2,300円+税
写真の新しい自由
菅付 雅信 著
●玄光社
●288P 
●ISBN 9784768307809
●本体2,000円+税
 

文芸書ベスト
 今回は文芸書単行本で印象に残ったベスト3を挙げてみます。
 三位『海の見える理髪店』は七月に発表された直木賞受賞作。短編集ですが、表題作の
「海の見える理髪店」は40ページに凝縮されたドラマに心を鷲掴みされます。
 二位『暗幕のゲルニカ』は七月の直木賞ノミネート作です。九・一一で夫を失った瑤子は反 
戦運動のためニューヨーク近代美術館にピカソの「ゲルニカ」誘致に奔走する現代パートと
ピカソが第二次世界大戦中に「ゲルニカ」を描く過去パートが交互に綴られます。大きなうね
りの果てに2つの物語がつながるところで驚き、そして涙。 
 そして一位は『よこまち余話』。明治の寂れた長屋で起こるちょっと不思議な人情話。住人 
もまたなにやら謎めいている。終始しっとり穏やかな筆致なのに住人の身の上が明かされる 
につれて加速する物語。最後は霞がぱぁーっと晴れていくような情景が見えるはず。この本 
がきっかけで木内昇にハマり、彼女の他作品をしばらく読んでいました。 (牧) 
海の見える理髪店 暗幕のゲルニカ
荻原 浩 著
原田 マハ 著
●集英社
●240P 
●ISBN 9784087716535
●本体1,400円+税
●新潮社
●357P 
●ISBN 9784103317524
●本体1,600円+税
よこまち余話
木内 昇 著
●中央公論新社
●282P 
●ISBN 9784120048142
●本体1,500円+税
 

エンタメベスト
 一位『奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン”』LIVE DVDです。毎日観ていま 
す。大好きなアーティストが奏でる音楽。疲れていても落ち込んでいても微笑んでしまう幸 
福感。生のLIVEはもちろんいい!でもDVDだと仕草や交わされた目線までも映してくれる。 
たとえ生で観た後でもLIVE DVDは楽しめること間違いなしです。 
 二位「市川崑と『犬神家の一族』」春日太一(著)。子供の頃からの横溝正史&市川崑好き 
な私に真正面から胸に刺さった本です。70年代のまだ映画が良かった時代の俳優さんに 
ついても書かれています。「あかんやつら 東映京都撮影所血風録」など頭角を表してきた 
「春日太一」はおすすめです。
 三位『隔週刊ジャズLPレコードコレクション』。何はともあれレコードなのです。うれしそうに 
購入するお客様に「レコードを聴かないと!」と背を押されました。CDとはまた違う、あの深 
い音を是非皆様へ。 (三) 
奥田民生
生誕50周年伝説
“となりのベートーベン”
市川崑と『犬神家の一族』
奥田 民生
春日 太一 著
●ラーメンカレー
  ミュージックレコード
●175分00秒
●本体6,500円+税(DVD)
●本体7,500円+税(BD)
●新潮社
●208P 
●ISBN 9784106106446
●本体720円+税
ジャズ・LP
レコードコレクション 1
●デアゴスティーニ
●ISBN 9784813519713
●本体917円+税
 

 
2016年私のBEST1
 
昨年からの渇望に止符 
 昨年のベスト1にウェイド・デイヴィス『沈黙の山嶺』を挙げた。「なぜ登るのか?」「そこに
山があるからです」の言葉で有名なジョージ・マロリーを先鋒にエヴェレスト初登頂を目指す
英国隊の三度にわたるアタックが克明に描かれる超弩級の作品だ。本書のメインがエヴェ
レスト攻略にあることは間違いないのだが、私が強く惹かれたのは隊員たちの前歴が語られ
るくだりである。彼らの多くが第一次世界大戦(WWT)に従軍し、想像を絶するほどの凄まじ
い激戦をくぐり抜け、そして夥しい数の死者を目にしてきたのだった。
 それを読んで以来「WWTとはなんだったのか」と様々な文献を渉猟してみるも、本書を超
える作品になかなか出会えずにいた。使用された火薬・弾薬・兵器の量や、どの戦線にどれ 
だけの人員が投入され、どれだけの死傷者が出たか、ということは大抵の本に書いてある。 
そうではなくて、実際に兵士たちが戦場で何を見何を聞き何を感じたのか、どんなふうに殺し 
合い、どんなふうに恐怖を味わい、そしてどんなふうに死んでいったのか、を私は読みたい 
のである。 
 その答えがジャック・タルディ『塹壕の戦争』にはある。表紙には有刺鉄線に両腕を絡めと
られ、腹の裂け目から白い腸と鮮血を垂れ流す兵士の死体が、扉には顔面の半分を吹き飛 
ばされた兵士の横顔が配され強烈な印象を残す。が、普仏激突の最前線の塹壕において 
はごくありふれた一コマにすぎない。各エピソードでは兵士たちの日常と戦闘が、リアル(で 
はあるがリアル過ぎない絶妙)なタッチのコミックで描かれるのだが、待ち受けるのはいずれ 
も死である。無謀な命令で、不注意で、好奇心で、功名心で、自滅で、味方の攻撃で、不運
で、偶然であっけなく人は死ぬ。エピソードの数は有限なのに、ここにはWWTに従軍した無 
名兵士たちのあらゆるヴァリエーションの死が詰まっているのではないか、と錯覚してしまう 
ほどだ。 
 ベスト3を挙げるコーナーではあるが、本年はこれ一冊で充分だ。 (沢) 
沈黙の山嶺 上 沈黙の山嶺 下
ウェイド・デイヴィス 著
ウェイド・デイヴィス 著
●白水社
●400P 
●ISBN 9784560084335
●本体3,200円+税
●白水社
●430P 
●ISBN 9784560084342
●本体3,400円+税
塹壕の戦争
ジャック・タルディ 著
●共和国
●185P 
●ISBN 9784907986124
●本体3,300円+税
 

れられた思想家
 アメリカではトランプ氏が大統領に決まった。フランスの次期大統領選では、極右・国民戦 
線のルペン氏が有力候補という。国際情勢が混沌とする中、あの人が存命ならば、どう評し
たかと思わずにはいられない。政治学者の高坂正堯だ。 
 「近代の超克」を唱えた高坂正顕の次男。二十代の若さで、京都大学助教授(現准教授)に
就任するほどの非凡さであった。 
 高坂の名を一躍知らしめたのが、一九六三年「中央公論」に寄稿した「現実主義者の平和 
論」である。当時、論壇の中心であった坂本義和らの「非武装中立論」の難点を指摘し、現実 
主義政治学の道を開くこととなる。 
 二〇一六年は高坂没後20年。新潮選書からは『世界地図の中で考える』が復刊され、12 
月には千倉書房から過去の時評集が発売予定である。 
 (おそらく)たくさん売れる本ではないだろうに、このような商品を作られた、出版社に敬意を
表して・・・。 (熊) 
高坂正堯と戦後日本 世界地図の中で考える
五百旗頭 真 編
高坂 正堯 著
●中央公論新社
●286P 
●ISBN 9784120047404
●本体2,000円+税
●新潮社
●291P 
●ISBN 9784106037894
●本体1,400円+税
 

ホモ・サピエンスの「虚構」をじる能力
 出版社からの新刊案内で目が釘付けになった言葉だ。非力なホモ・サピエンスが他のホ
モ属に抜きん出て文明を打ち立てた、その鍵だという。国家・宗教・企業・貨幣・法律・自由
「虚構を信じる能力」か・・・その言葉だけで人間の複雑な社会を説明できてしまうのでは? 
と衝撃を受けた。そうだ、子供の将来の教育費で悩んでいるのも虚構なんじゃないの?(そ
れはただの現実逃避です) 
 本書ではホモ・サピエンスがアフリカで生まれたところから現代までを論じている。先史時
代、「虚構を信じる能力」を獲得したことでどのように他のホモ属を駆逐し大型捕食動物に 
対抗できるようになったのか、その説明が秀逸だ。その部分があまりに感心したので、有史 
時代はただ歴史をなぞるだけかと思いきや、一万年前の農業革命でガツンとくる。サピエン 
スは進化したと思っているけれど、現実は大多数が幸福になれない社会なのはどうしてな 
のか、鋭く切り込んでいく。
 現代は虚構にまみれた情報化社会。なにが虚構で何が実体なのか、もう一度考えたい。 
 (牧) 
サピエンス全史 上 サピエンス全史 下
ユヴァル・ノア・ハラリ 著
ユヴァル・ノア・ハラリ 著
●河出書房新社
●300P 
●ISBN 9784309226712
●本体1,900円+税
●河出書房新社
●296P 
●ISBN 9784309226729
●本体1,900円+税
 

自分の知っている歴史は時代れかもしれない
 タイトルに「○○の知らない」と付く新書は割りと多いのですが、世界史という分野は範囲
が膨大なので、先生が知らないことのほうが多いのではないかと思います。
 世界史というと西洋や中国の歴史を浮かべますが、現在の大学入試では東南アジア、ア
フリカ、ラテンアメリカ、イスラームの世界の歴史が、以前より多く出題されるようになってい 
るそうです。また、高校時代に学習したことが、現在では時代遅れになっているとか、そもそ
も学習している時点で時代遅れの学説だったということも珍しくはないとのこと。
 本書は、教科書では省略されてしまって載らない、あるいは、研究上の議論が決着してい 
ないので載せられない、といったテーマを中心に述べられています。著者は、西洋経済史 
が専門の方なので、西洋史に偏っていますが、それでも、新鮮な見方、発見がたくさんあり 
とてもわくわくする一冊です。 (谷) 
先生も知らない世界史
玉木 俊明 著
●日本経済新聞出版社
●232P 
●ISBN 9784532263232
●本体850円+税
 

 
最新、成政研究
 
 北日本新聞で連載中から気になっていた単行本『武者の覚え』はやはり面白かった!佐々
成政という武将は、富山県民の間では知名度は高いですが、全国的には脇役感のある武将
で、評価も高いとは言えません。しかし、本書を一読するといかに周りから一目置かれる存
在だったかということが良く分かり、目から鱗が落ちること間違いなし。その最たる証拠が、タ
イトルにもなっている、因縁ある天下人秀吉による成政評「武者の覚え(武士の鑑の意)」と
いうことです。タイトルが抜群にカッコいい。ただし、作者が成政に惚れすぎているのか随所
で成政を絶賛しすぎる気も・・・。個人的には、軍事指揮官としては超一級で、教養もある魅
力的な人物だったが、大名となって生き残っていく為のずば抜けた状況判断力が無かったの
が惜しい、という歯切れの悪い評価に落ち着きます。戦国時代を生き抜くことはとても厳しい 
のです。 
 ともかく、越中の支配者としての期間が四年足らずだった武将ですが、四百年後の今も富 
山県民の多くから慕われている成政の生涯は十二分に価値があったと羨ましく思います。な
お、作者は滋賀県出身、富山在住の方です。拙いこの文章ですが、目に留まって頂くと嬉し
いです。なかだの従業員、「書店員の覚え」目指して精進しています。 (矢)
武者の覚え
荻原 大輔 著
●北日本新聞社
●165P 
●ISBN 9784861750939
●本体1,600円+税
 

追悼 田部井淳子さん
 現在、北國新聞にて唯川恵さん作『淳子のてっぺん』が連載されている。その主人公が
「田部井淳子」という名前なのだが、恥ずかしながら私はそのとき田部井さんの存在を知ら
ず、『淳子のてっぺん』はフィクションだと思っていた。その後、偶然何かの広告で田部井さ
んのお名前を知り、「名前が似すぎているし、この方がおそらくモデルなのだろう」と思った 
が、それを知ってしばらくしないうちに田部井さんががんでなくなったというニュースを見て
驚いた。ニュースで「女性として世界で初めてエベレストに登頂」などの偉業を知り、さらに
驚いた。そこで興味が湧き本書を読んでみた。 
 小説の先を知ってしまう感覚もあったが、この方の落ち着いた語り口からでも感じられる 
常に前向きで自然体に物事を受け入れる姿勢には感じるものがあった。 
 『淳子のてっぺん』の先を知りたくない方は連載が終了してからどうぞ。 (中) 
私には山がある
田部井 淳子 著
●PHP研究所
●141P 
●ISBN 9784569784793
●本体1,200円+税
 

切なあなたのもとへ
 死んだ人に、何かに「とりつく」機会を与える「とりつくしま係」。息子の野球道具、恋人の
マグカップ、書道の先生の扇子・・・モノに「とりつく」という共通事項のもと、10の短編が描
かれる。
 幼くして死んでしまう者、不慮の事故で死んでしまう者、死は様々な形で訪れる。「とりつ
く」ことはできても声は届かないという制約のため、死んだ者からの思いが悲痛に響く。一
方で、大切な人を思う気持ちが伝わってきて、それぞれの話はとても短いのに、しっかり読
んだ感じがする。 
 自分なら誰の傍に行きたいと願い、何にとりつくことを選ぶだろうか。いずれは訪れる死へ 
向かっての生き方を考えさせられ、大切な人に会いたくなる一冊。 (古) 
とりつくしま
東 直子 著
●筑摩書房
●224P 
●ISBN 9784480428295
●本体600円+税
 

第一回私の挫折本 『ジョン・レノン 対 星人』
 アメトーク「読書芸人」の回で、人気芸人のカズレーサーさんオススメ本として『ジョン・レノ
ン対火星人』が紹介されていました。それまでは「どの本が売れるかな」という書店目線で楽
しく 見ていたのに、不意に蘇る挫折の記憶・・・。
 あれは書店員になりたての頃。子供のころから本好きだったはずが、大学時代にすっかり 
読書習慣をなくしてしまっていた私は、このままではマズい、と好んで読んではこなかったジ
ャンルにも挑戦してみることにしました。その中で出会ったのが先述の一冊だったわけです
が、とにかくワケが分からない!同著者の『さようなら、ギャングたち』は「これは小説なの?」 
と思いながらも非常に面白く読めたので、その勢いのまま手に取ったのですが、「どこが」も 
「なにが」もなく、ただただ分からない。結局、「高橋源一郎を理解するには自分は未熟だっ 
たのだ」と言い聞かせ、そっと本棚にしまい込んでいたのでした。 
 さて、よい機会なので再挑戦、と思いこの度読み直したところ、あれ?面白いかも。 
 これは読書の経験値が上がったからであって、自分が年をとったからではない・・・よね? 
 (奈) 
ジョン・レノン対火星人 さようなら、ギャングたち
高橋 源一郎 著
高橋 源一郎 著
●講談社
●256P 
●ISBN 9784061983656
●本体1,100円+税
●講談社
●382P 
●ISBN 9784061975620
●本体1,400円+税
 

道ラグビー漫画!
 今年の十月からアニメが放送中のラグビー漫画『ALL OUT!!』を紹介します。
 ラグビー未経験の祇園が高校の入学式でラグビー経験者の石清水と出会い、神高ラグビ
ー部に入部することで物語が始まります。祇園はルールすら知らないところから始まるので
タックルやボール回しなど一つずつできることを増やしていき、ゆっくりとした成長が楽しめま
す。
 主人公の成長という王道もいいですが、この作品を語る上で欠かせないのが元日本代表
の籠コーチの存在です。神高ラグビー部には指導者がおらず、祇園がネットで見つけ出して
きたことがきっかけで突如現れます。
 「毎日をオールアウトする覚悟があるんならお前らは花園にも行ける」。オールアウトとは 
全力を出し切ること。弱小ラグビー部を導いていく名コーチの言葉にしびれつつ主人公たち 
の成長が楽しめる、今オススメの王道スポーツ漫画です。 (林) 
ALL OUT!! 1
雨瀬 シオリ 著
●講談社
●208P 
●ISBN 9784063872088
●本体552円+税
 

 
2016音楽ドキュメンタリー映画BEST3
 
 今年見た音楽ドキュメンタリーは本当にハズレがなかった。
 結成26年の電気グルーヴがいなかったら日本にここまでテクノが浸透しなかっただろうし
27歳で逝ってしまったエイミー・ワインハウスの歌をもっと聞きたかった、ビートルズがこの
世界ツアーの中の異常な生活では解散してしまったのは無理もなかったな、とか、監督の
視点が通っているにしても、その当時の映像でなんとなく見てしまった私にも彼らの楽しさ
嬉しさ、苦しさが伝わるものだった。
 特にエイミーやビートルズの歌詞はその時の彼らの悲鳴のようで、だからこそ、英語がよ
くわからなくても伝わってくるものがあったんだ、と改めて理解できた。ファンでもファンでな
くてもオススメです。 (山)
DENKI GROOVE
THE MOVIE?
AMY
DENKI GROOVE
エイミー・ワインハウス
●ソニーミュージック
●203分00秒
●本体4,000円+税(DVD)
●本体5,000円+税(BD)
●ソニーピクチャーズ
●128分00秒
●本体3,800円+税(DVD)
●本体4,743円+税(BD)
●2017年1月11日発売予定
ザ・ビートルズ
EIGHT DAYS
A WEEK
ザ・ビートルズ
●KADOKAWA
●218分00秒
●本体5,800円+税(DVD)
●本体6,800円+税(BD)
●2016年12月21日発売
  予定
 

コミックエッセイベスト
 今年発売されたコミックエッセイの中で個人的に面白いと思ったものを三冊ご紹介します。
 『子宮の中の人たち』は、一人の女性の妊娠から出産までを描いたもの。他の本と大きく
違うのは、子宮の中の赤ちゃんと、それを作っている人(?)の様子も想像で描かれていると
ころです。子宮の中にはこんなに苦労している人がいる(??)と思うと、命の尊さが染みて
きます。それでいてタッチはあくまでコミカルなのも○。
 『腐女子のつづ井さん』は、ボーイズラブを愛好する「腐女子」である、つづ井さんの日常の 
記録です。これがとにかく元気いっぱいで楽しそうなのです。アニメや漫画のキャラクターを
全力で愛し、友達とその気持ちを分かち合う様は爽快ですらあります。 
 『うちの猫がまた変なことしてる。』は飼い猫との生活を、特に猫の困った行動に注目して描
いています。不可解だけど愛らしい猫と、振り回されながらも許してしまう飼い主さんの様子 
が何とも愉快です。 (仁) 
子宮の中の人たち 腐女子のつづ井さん
EMI 著
つづ井 著
●KADOKAWA
●243P 
●ISBN 9784047341838
●本体1,000円+税
●KADOKAWA
●184P 
●ISBN 9784040680774
●本体950円+税
うちの猫がまた変なこと
してる。
卵山 玉子 著
●KADOKAWA
●176P 
●ISBN 9784040681030
●本体1,100円+税

暮らしにまつわる
 ミニマリストの生活が注目された二〇一六年。ファッションでも服を増やさず定番品を選ぶ
ための本が多く出ました。ここで紹介するのは『大人のおしゃれDo!&Don’t!』です。帯
に書いてある「重いものはすべてだめ〜なぜなら人生がもう重いから(笑)」に共感するよう
な微妙な「お年頃」に贈る対談つきのおしゃれ本です。大人な美しさをもつためのルールを
軽妙に教えてくれます。
 糖質制限などせっかく食事に気を付けたならば食後の歯磨きにも気を配りたいものです。
『歯はみがいてはいけない』は私たちの誤った歯磨き常識が歯を損なう原因だと警鐘を鳴ら
しています。とはいえ、いきなり歯磨きを止めてしまうのは恐ろしいですよね。私はとりあえ
ず舌回し運動から始めてみます。これがどのような運動かは本書にて。
 最後に羽田空港を世界一清潔な空港にした立役者、新津春子さんの『世界一清潔な空港
の清掃人』を紹介します。清掃のプロが何を大切にして生き、仕事をしているか。素朴な言 
葉に素直な人柄を感じます。 (大)
大人のおしゃれ
Do!&Don’t!
歯はみがいてはいけない
槇村 さとる 著
地曳 いく子 著
森 昭 著
●集英社
●120P 
●ISBN 9784087816150
●本体1,300円+税
●講談社
●192P 
●ISBN 9784062729581
●本体840円+税
世界一清潔な空港の
清掃人
新津 春子 著
●朝日新聞出版
●160P 
●ISBN 9784023314665
●本体1,000円+税
 

今年一番ののバイブル
 TVを見ているとかなりの頻度で化粧品のCMが入ります。「若々しく見え」たり、「ちりめん
ジワをなくし」たりする効果が売りです。確かに若さはプライスレス、お金では買えないです
よね。昔のように若く見られたら超ハッピー。果たして本当にそうかしら?
 そんな中で出会ったのがこの『人はいくつになっても、美しい』でした。著者のダフネは88 
歳にして現役のモデル。仕事を、人生を楽しむ姿は粋なパリのマダムであり、自分の長所 
や欠点を受け入れる様は達観した聖職者のようでもあります。その時々の自分の良さを見
つける生き方は私のなりたい姿でした。
 衰えは生き生きした表情の前ではたいした問題ではありません。ピッと伸びた背筋ならユ
ニクロでもお似合い。少々しわの目立つ手は働き者の証拠ですもの、慈しんでハンドクリー
ムを塗ってあげたい。若く見えても本当に若い子たちには敵いません。今の自分をもっと愛
してあげませんか? (藤)
人はいくつになっても、美しい
ダフネ・セルフ 著
●幻冬舎
●158P 
●ISBN 9784344029576
●本体1,300円+税
 

 編集後記
 書誌情報を載せるのに大変苦労した号でした・・・。年末年始にはぜひ今号を参考に、読書
を楽しんでください!