(2015年2月15日号)  PDF版
(back numberで表示されている2013年10月15日号までの税込金額は、消費税率5%で
計算されています。)
  

主な記事から
 黒部店OPEN 旧黒部店の思い出  エンタメ大物作家達が敬愛する作家とは 
 もはやお笑い芸人の余技ではない? 

 
帰ってきたBOOKSなかだ黒部店
 
 昨年12月11日、黒部ショッピングセンターメルシー内に「Booksなかだ黒部店」がオープン
いたしました。
 「こちらはどこの本屋さん?」というご質問に「Booksなかだです」とお答えすると「魚津のアッ
プルヒルにあるお店ね。」「掛尾の本店に行ったことがあるよ。」といったお声を多数いただきま
した。なかだを知っていただけていることを大変嬉しく思うと同時に、予想していた「ある言葉」
がほとんど聞かれなかったことに若干の寂しさも感じておりました。
 黒部の皆様、お忘れではないですか?かつてBooksなかだが黒部の地にあったことを!そ
う、私は心密かに「あぁ、昔この辺にあったね」という言葉を期待していたのでした。
 しかし、それも無理からぬ話かもしれません。旧黒部店が閉店したのはもう15年以上前の
こと。弊社にもそのことを覚えている社員が少なくなってきているのが現実です。(かく言う私
も、実際にはよく知らなかったのですが・・・)
 新黒部店は、コンパクトな売場ながら書籍、雑誌、コミックはもちろん、小・中・高校の参考書 
から保育書や看護書といった専門書、CD・文具までを幅広く取り揃えております。再び末永く
地元のお客様に愛される書店、「あなたの書斎」になりたいという願いをこめ、自分たちでこの 
言葉を送りたいと思います。 
 「おかえり、黒部店」 (都) 
 

まりの店へ
 ある日、黒部市に新店が出来ると聞いて衝撃を受けた。十数年前にあった旧黒部店から私
の書店員人生が始まったからだ。現在も黒部市民の私は辞令をもらう前からおそらく転勤に
なるだろうと覚悟をした。
 思えば、黒部店とは縁を感じる。元々、旧黒部店は私が小学生の時に母校中央小学校の 
前に開店。とてもワクワクしたものだ。年月を経て働き出した際も、まさかここで働くことにな
るとはと思った。 
 右も左も分からないまま始まった書店員生活。小さな店だったので、配本も少なく苦労もし 
たが自分なりにフェアを行ってみたりと新人ゆえに無謀なチャレンジも出来て楽しかった。 
 こうして新しい黒部店へ戻ってきて、あの頃とは違いやらなければならない事も多く辛いと
きもある。しかし、旧黒部店のお客様に再会したり、「メルシーに入ってくれて本当に助かる」
というお言葉を多々いただくと、とても嬉しくご期待に添えるような良い店にしていきたいと改
めて思うのだ。 (米)
 

吾輩は好きになったのである
 昨年秋、うちの庭で親とはぐれた子猫が鳴いていたので保護して飼うことに。猫は苦手だと
思っていたが、もうかわいいのなんのって一瞬で犬派から猫派に寝返ってしまった。2月22
日はニャンニャンニャンで猫の日!ということで、最近グッと来た猫写真集を二冊ご紹介しよ
う。 
 まずは『猫ホイホイのにゃ〜ぞ』。いろんなメディアで紹介されているので猫ホイホイをご存 
知の方も多いだろう。別名「猫転送装置」。床にガムテープで囲いを作るとあら不思議、猫が 
自然とその中に入ってくつろぎだすのである。これ、うちの猫にも試してみたがうまくいかなか 
った。悔しい。 
 お次は『ニャンモナイト』。冬になると丸まって眠る猫の形がアンモナイトそっくりということで
ついたネーミング。猫の柄によっていろんな味わい深いニャンモナイトが各家庭に出現する。
我が家でも日々撮影会と鑑賞会が行われており、うちの猫は縞模様なので・・・って、これ、
単なる猫バカですよね。このへんでやめときます。 (斉)
猫ホイホイのにゃ〜ぞ ニャンモナイト
風来堂 著
●扶桑社
●91P 
●ISBN 9784594071974
●本体1,000円+税
●二見書房
●95P 
●ISBN 9784576150130
●本体925円+税

文芸書のから
 「この家には障りがある!」と本の帯にはおそろしげな文句が記載されている通り、怪異譚
なのです。ただ、異能の人が出てきて、怪異を解決という展開はありません。書名につく「営
繕」の意味にあるとおり営繕屋・尾端が建築物の修繕をしていくことで、その家に住む人々が
日常を取り戻していく物語です。怪異を鎮め祓うではなく、共存していくという展開です。
 華々しい活躍をする登場人物がいなくても、小野さんの書く怪異はあとからぞくぞくとくる怖
さがあります。夜に読むと特にそう感じます。また物語の結末にはほっとした、なにか救いの
ようなものも感じます。その筆致はさすが小野不由美さんということなのでしょうか。
 読後、本の表紙をじっと眺めていたらいろいろ隠されたものに気付き、改めて驚きました。
 (京)
営繕かるかや怪異
小野 不由美 著
●KADOKAWA
●268P 
●ISBN 9784041024171
●本体1,500円+税

書店員の小学生にウケる読み聞かせ本
 とっておきの本で内緒にしておきたいぐらいなのですが、子供達の喜ぶ顔が見たいので教
えちゃいます。
 「なぞかけ」=日本の言葉遊び。○○とかけまして××ととく。その心は?
 そのまま読むだけではちょっと子供には難しいようですが、ヒントを出しながら読み進める
と、次々手を上げて答えを言いたくて仕方がないっていう顔を見ることができます。小学2年
生に読んだときも、わかりにくいかな?と心配だったのですが、食いつきは最高!読みなが
ら心の中で拍手喝采です。
 昨年の9月新刊です。あまり知られていないうちに、あなたの定番にしてください。
 (川)
なぞかけどうじょう
中川 ひろたか 作 大島 妙子 絵
●金の星社
●32P 
●ISBN 9784323072890
●本体1,300円+税
 
掛尾本店魚津店では毎月絵本の読み聞かせ会を開催しております。
   ぜひご参加ください。楽しいですよ! 
 

 
天才数学者の秘められた人生
 
 アカデミー賞の有力候補「イミテーション・ゲーム(原題)」の主人公はアラン・チューリング
である。現在では「人工知能の父」と呼ばれ、コンピュータの先駆者としての評価が定まって
いるが、その生涯は不遇に満ちたものだった。
 第二次大戦時にはドイツ軍の暗号機「エニグマ」(優に10京通りを超す組合せを誇る)の解 
読に成功し、連合国を勝利に導いた功労者であったが、軍事機密に関わるとしてその功績
は秘匿され、名声を得ることはなかった。また、同性愛の罪(当時は犯罪)で罰せられ、性向
を矯正する治療を強要されるなどの辱めを受け、2年後に青酸による自殺。享年42歳であっ
た。
 映画化には事欠かないこの天才数学者を演ずるはベネディクト・カンバーバッチ。刈上げ
七三分けのチューリングとは全然似てないが、トレードマークのモジャモジャ頭をバッサリや
って熱演(しているはず)。ぜひご覧あれ。 (沢)
エニグマ アラン・チューリング伝 上
アンドルー・ホッジス 著
●勁草書房
●412P 
●ISBN 9784326750535
●本体2,700円+税

今月のオススメ文庫
レジェンド!!”
 作家が逝去した際、追悼を兼ねて作品集が編まれたり、復刊されたりすることは珍しくはな 
いが、2013年10月に亡くなった連城三紀彦は異例ともいえるほどの刊行ラッシュだった。 
極め付けが、昨年11月に出たアンソロジー『連城三紀彦レジェンド 傑作ミステリー集」だ。
 なにせ、編者陣が超ど級。綾辻行人・伊坂幸太郎・小野不由美・米澤穂信という、そうそう 
たるメンバーである。連城を敬愛してやまない4人が、「これだけは読んで!」と、熱すぎるほ
どの熱意を持って選んだ珠玉のミステリー6作品が収録されている。
 各作品の扉に寄せられた編者のコメントもさすが手練れで、読みどころを端的にまとめて 
いる。確かな選球眼を持った編者に導かれ、気付けば連城ワールドにどっぷりとはまってし 
まった。連城作品入門書としても最適の1冊だろう。 
 巻末には綾辻×伊坂の特別対談が掲載されており、これも必読。絶好の作品案内にもな 
っているので、次に何を読もうかとわくわくしてくる。それにしても、連城作品を愛するあまり
手書きPOPを作って書店を回ったという伊坂幸太郎、ウチの店にも来てほしい!
 (香)
連城三紀彦レジェンド 傑作ミステリー集
連城 三紀彦 著 綾辻 行人 ほか編
●講談社
●317P 
●ISBN 9784062779814
●本体590円+税

日本人のらない納豆?
 「納豆って日本固有のものじゃないの?」雑誌「考える人」で始まった高野秀行の新連載を
を読んで驚いた。タイトルも怪しげな「謎のアジア納豆」。ホンマかいな。
 写真では薄焼きせんべいにしか見えないが、ペーストにした納豆を円盤状にして干したも
のらしい。これはミャンマーの「トゥナウ」。糸は引かないが匂いも味も納豆そっくりだという。
食べる時は割って揚げたりもするが、粉末にして調味料として使うのが一般的だそうな。ま
さに所変われば、である。 
 高野さんによると、タイ、ネパール、ブータン他多数の国にも納豆的食品があり、その全貌 
を研究した書籍はまだないとのことだったが、昨年末突如本書が現れた。 
 著者の横山さんは15年にわたってアジア各地へ赴き納豆を調査。呼称・形状・発酵方法・ 
調理法など、納豆文化の多様性を網羅した集大成的な研究書を著した。それでも納豆の起
源はまだ突き止められていない(仮説は提示)というから謎は奥深い。高野さんにもまだ可
能性がありますよ。 (粘) 
納豆の起源
横山 智 著
●NHK出版
●317P 
●ISBN 9784140912232
●本体1,500円+税

男とは異星人だ
 タイトルの言葉は著者がはじめに書いているものです。ぎょっとしますが、本書を読むと妙 
に納得してしまいます。同じ人間でもこんなに考え方が違うのか、と。
 私は結婚しているので、特に第3章「結婚・家庭編」が印象に残りました。「ああ、わかるわ
かる。」の連続です。せっかく私が家事を手伝ったのに(この「手伝う」という言葉が禁句なの
です。詳しくは本書で)妻から「ここがダメ。」「もっとこうしてよ。」と言われると、やる気がなく 
なります。正しくは、妻は夫を大げさに褒めつつ、「次からこうしてもらえるともっと嬉しい。」 
など、優しく指導すべきなのです。著者が「家庭では妻が社長、夫は気の利かない新入社
員」と書いているので、その話をしつつ、「もっと私を褒めて、優しく指導してほしい。」と妻に
伝えたところ、「社長と新入社員」という言葉だけが強く記憶に残ってしまったようで、「あれ
をしておいて」という指示が増えただけでした。これから本書を読む男性の方は、私の二の 
舞にならないようにお気をつけください。 (中) 
察しない男 説明しない女
五百田 達成 著
●ディスカヴァー・トゥエンティワン
●255P 
●ISBN 9784799315279
●本体1,300円+税

抱腹絶あそこ体験記
 「笑っていいとも!」観覧・創価大学オープンキャンパス・免許停止処分者講習・自費出版
説明会・・・。毒舌コラムニストがなかなか行けない「あそこ」を訪問し、書きたいように書いて
いる。
 なにせタイトルが秀逸。海洋散骨体験クルーズの回は「千の泡になって」である。本編が
おもしろくないわけがない。
 27もの「非日常」が描かれるが、ひとつも行きたいと思わないのだから素晴らしい。著者
の解説を読むのは、会場に出向く以上に楽しい。 (熊) 
今井舞がゆく! 気になる「あそこ」見聞録
今井 舞 著
●新潮社
●204P 
●ISBN 9784103380313
●本体1,200円+税

又吉
 文芸誌「文學界」に初小説が掲載されたことで話題になり多くの人の興味を引いた、お笑 
いコンビ「ピース」のボケ担当、又吉直樹。
 太宰治好きという事から始まり、これまでも様々な形で本の世界に貢献しているが、今回
の大注目には驚きを隠せない。
 「ピース又吉」お好き? 
 NHKの「オイコノミア」という経済番組に出演している姿をずっと見ているうちに愛着が湧き
番組内で発表される経済ポエムになるほどと笑む。
 そこに漂う“又吉感”。 
 実は本作を含め、ピースの著作物すべてに流れているのではないか?読み進めるごとに 
感じる。 
 お笑い芸人としては決して好みではないが著作世界に浸るのは気持ちがいい。
 話題の小説を読んだ方もまだの方も、たくさんの“又吉感”を感じていただけたらと思う。
 (三)
新・四字熟語
又吉 直樹 文 田中 象雨 字
●幻冬舎
●260P 
●ISBN 9784344423008
●本体540円+税

 編集後記
 北陸新幹線「黒部宇奈月温泉駅」は現時点で日本一長い新幹線の駅名になるそうです。
駅名標の写真を撮りにいくだけでも楽しいかもしれませんね。 
 絵本『黒部の谷のトロッコ電車』(福音館書店)も発売されます。
 以上、黒部特集号でした。