(2008年3月15日号)  PDF版

主な記事から
 骨になっても美しい  「お弁当」の季節きたる  「ちょっとだけ」その真の意味は

クラブで「寝てないんだ」と憮然として呟く作家も、
クラブで「寝てないんだ」と憮然として呟く作家も、
クラブで「寝てないんだ」と憮然として呟く作家も、
クラブで「寝てないんだ」と憮然として呟く作家も、
『丸山真男』をひっぱたきたい。
 本来はもっとメジャーな雑誌であるべき筈のものが、発売元の朝日新聞社の力量不足のせいか、
新書ブームに押されての総合誌の停滞の一環なのか、『論座』はライバルの『文藝春秋』に発行部
数、影響力で、まったく歯がたたない。
 そんな情況下『論座』は〇七年一月号に画期的論文を掲載する。「『丸山真男』をひっぱたきたい
三十一歳、フリーター。希望は戦争」である。
 題だけでも物凄いインパクトである。『限りなく透明に近いブルー』以来の衝撃を受けた。わたしの
生の言葉で言うと「おい、お前、何ということを言い出すのか。場所をわきまえろ。」である。
 念のために場所の説明をおこなうと『論座』の誌上のことであり、『諸君』の誌上ではないということ
である。あらかじめ右寄りの著者と読者しか想定していない『諸君』や『正論』では、丸山はひっぱた
かれるべきヒールとしての役割が与えられていて新奇性はない。
 題だけではなく、この論文は大きな反響を呼び起こし、四月号では「希望は戦争」に対する応答文
を特集する。応答したのは、佐高信をはじめ、福島みずほ、森達也、鎌田慧、斎藤貴男、そして鶴見
俊輔と吉本隆明(一部割愛)。著者(赤木氏)曰く、草野球の試合に王と長嶋がやってきたようなライ
ンナップ。ここで著者はひるむことなく、速球勝負に出る。さて勝敗は?
 本書では『論座』掲載論文だけでなく、論文を書くまでと、論文以後が収められていて、三十一歳
のフリーターの心情というものがよくわかる。わたしには論文だけを読んで心情を読む行為を拒否
しているようにとれた。こんな読みでは「なぜ若者が自分の首を絞めることになる小泉首相を支持し
たか?」の問いに対する解答を得ることはできないだろう。
 二月にみすず書房から『ヒトラーを支持したドイツ国民』が出た。ナチス台頭には国民の同意があ
ったとのこと。著者の赤木氏が諸手をあげて戦争を望んでいるわけでもなく、国民が戦争に望みを
かけるときのメカニズムを解析した書として読めば、立派なフィールドワークだと思う。 (蛙)
若者を見殺しにする国 若者を見殺しにする国 ヒトラーを支持したドイツ国民 ヒトラーを支持した
ドイツ国民
赤木 智弘 著 ロバート・ジェラテリー 著 
根岸 隆夫 訳
●双風舎 
●349P 
●ISBN 9784902465129
●税込1,575円
●みすず書房 
●324P 
●ISBN 9784622073437
●税込5,460円

骨格万歳!
 人それぞれ違えども、皮と肉をはがしてしまえば、骨格はみな同じ。種が違えば、形も変わるが、
骨は脊椎動物共通の持ち物だ。しかし私たち人間以外の全骨格なんて、博物館などでしかなかな
かお目にかかれない。
 『骨から見る生物の進化 EVOLUTION』は、世界初!驚異の「骨格」写真集である。脊椎動物の華
麗で貴重な骨格が満載である。グロテスクだが、その何ともいえない造形美に目を奪われること間
違いなし。均整のとれた四肢と美しく並んだ脊椎。何とも神秘的。ただそれだけではなく、脊椎動物
の骨格は、数十億年にわたる進化の痕跡を残している。骨格は全てを物語るといっても過言ではな
いのだ。 (萬)
骨から見る生物の進化 骨から見る生物の進化
ジャン=バティスト・ド・パナフィユー 著
●河出書房新社 
●287P 
●ISBN 9784309252179
●税込9,240円

Web
 「もし二千年前からインターネットがあったら?」そんな妄想を形にしてしまった書籍が発売されま
した。書籍名は『歴史Web』。
 気になる内容の方は、もしも二千年前からインターネットがあったとして、それじゃあ邪馬台国の
ホームページはこんな感じ、関が原の戦いの実況掲示板はあんな感じという、あまりにも無茶な構
成。さらには、某巨大掲示板のようなノリで書かれているため、まともに読もうとすると逆につらいか
もしれません(笑)。
 とはいうものの、苦手な人にとっては近づくこともはばかられるような日本史。面白おかしく読むに
はいい素材かと思います。弥生時代から江戸末期まで網羅されており、有名な人物、事件を押さえ
るには十分な内容です。
 世間では、日本史必修化の流れも生まれている今、年号が覚えられないという理由で日本史をと
らなかった私も一度勉強しなおすべきでしょうか・・・。 (澤)
歴史Web 歴史Web 日本史の重大事件がホームページになった!
藤井 青銅 著 金谷 俊一郎 監修
●日本文芸社 
●206P 
●ISBN 9784537254921
●税込1,260円

太陽の塔
 現在注目されている森見登美彦のデビュー作。発売がハードカバーで03年、文庫化されて一年あ
まりが過ぎていて、新刊というわけではありません。
 ファンタジーノベル大賞を受賞した作品ですが、幻想的な話を期待していると裏切られます。読ん
でみて、これがファンタジー? ファンタジーノベル大賞をとってよかったのか? と考えてしまう内容で
す。
 主人公が失恋した(ふられた)元彼女・水尾さんの日常を研究している(観察している)というところか
ら話が始まります。ストーカーなのではと思われる行為です。物語の中心は主人公の日常と友人た
ちの間抜けな行動(+妄想)についてなのですが、作者の純文学のようなまじめそうな文体でつづられ
ています。そのギャップのため、ただただおかしくて・・・、と読み終えてしまいました。楽しい小説だと
思います。
 『この文庫がすごい! 2007年度』の中での解説を読むと、妄想はファンタジーらしいので、ファンタ
ジーノベル大賞受賞もありのようです。 (京)
太陽の塔 太陽の塔
森見 登美彦 著
●新潮社 
●237P 
●ISBN 4101290512 
●税込420円

中田図書販売教養講座のお知らせ
 来る5月11日(日)、婦中町のショッピングセンター・ファボーレで『江戸の大商家のきまりごと』を
開催します。講師はNHK学園でもおなじみの油井宏子先生です。詳しくはこちら

お弁当本の季節
 春は入園・入学の季節。くわえて健康・節約という視点からお弁当づくりに挑戦する人も多いので
はないでしょうか? 店頭でもこの季節、様々なお弁当づくりの本が並びます。
 そんな中でお勧めしたいのが、『私たちのお弁当』。雑誌「クウネル」の連載記事をまとめて2,3年
前に発行されたものですが、私自身ずっと気に入っている本です。
 とにかく表紙のお弁当の写真がすごくシンプルなのに、「おいしそう」と思わせるインパクトを持って
います。内容はというと四十七人の職業も年齢も様々な人たちが自分のお弁当を、それにまつわる
エピソードを交えて紹介しているというものです。全体にほのぼのとした空気が漂っており、料理本
としても、また簡単な読み物としても楽しめる一冊です。
 現在でも「クウネル」でこの連載は続いており、毎号等身大かつ魅力的なお弁当が紹介されてい
ます。
 同じくクウネルの本として最近、『ずらり料理上手の台所』という本が発売されました。こちらは料理
研究家さんの台所が紹介されているものなのですが、本全体に何ともいえない安らぎ感があって、
新たなお気に入りの一冊となりそうです。 (久)
私たちのお弁当 私たちのお弁当 ずらり料理上手の台所 ずらり料理上手の台所
クウネルお弁当隊 編 お勝手探検隊 編
●マガジンハウス 
●127P 
●ISBN 483871615X
●税込1,365円
●マガジンハウス 
●151P 
●ISBN 9784838718092
●税込1,575円

ちょっとだけ
 なっちゃんのうちに赤ちゃんがやってきました。ママは赤ちゃんのお世話で忙しそう。買い物に
行くとき、ママは赤ちゃんを抱っこしているので手をつなげません。なっちゃんはママのスカート
をちょっとだけつかんで歩きます。
 妹ができてお母さんにかまってもらえない寂しさを乗り越え成長する子どもを描いたこの絵本。
自分の子どもの頃を思い出し、共感できる方は結構いるのではないでしょうか。なっちゃんのがん
ばりがちょっと切なく、お母さんの愛情が深く暖かい。二人目ができるお母さんだけでなく、初めて
お母さんになる方にも是非読んでいただきたい一冊。福音館の絵本では『ぐりとぐら』などの定番
絵本にも負けないくらいの人気絵本です。 (岩)
ちょっとだけ ちょっとだけ 
瀧村 有子 さく 鈴木 永子 え
●福音館書店 
●31P 
●ISBN 9784834022995
●税込840円

老化防止以外にも使えます。『人は「感情」から老化する』
 ある年齢以上の人の中に、変に感情的な人がいるなぁと思っていたので、この本で膝を打つ思
いがした。
 四十代から前頭葉の機能が衰えてきて、感情をコントロールする能力が低下するためらしい。
彼らに悪気はないのがわかって一安心。とはいっても、「生活の質」のためにも脳の老化はなる
べく防ぎたい。すぐ始められそうなものから、ゆっくり取り組むものまで、機能を保つための方策
がアレコレ載っている。
 また、自分や家族の感情と上手く付き合っていくためのヒントとしても使える。例えば、誰か(特
に男性)を幸せにするには彼らの自己愛を満たしてあげればよい。また、不安はコントロールでき
ないが、行動はコントロールできる。
 負の感情と上手く付き合い、前向きで明るい気持ち・上機嫌でいられれば、自分にとっても周囲
にとっても幸いである。 (山)
人は「感情」から老化する 人は「感情」から老化する 前頭葉の若さを保つ習慣術
和田 秀樹 著
●祥伝社 
●209P 
●ISBN 4396110529 
●税込777円

B型はどんな人
 血液型で本当に性格がわかるかどうかはともかくとして、日本国内においてはどちらかといえば、
B型の人は少々悪く言われがちではありませんか? そんなB型代弁本『B型自分説明書』。
 B型の人のB型度をチェック方式で調べる形式を取ってはいますが、質問というよりB型とはこう
なんだ! という主張が面白おかしく書かれています。
 自分の周りのB型の人を思い浮かべて読むと、「そうかもしれない」と納得してしまう項目多数。も
ちろん性格は人それぞれのものなので、それで全てを理解できるものではありませんが、この本
をきっかけにもっと人への理解を深めてみませんか? (湯)
B型自分の説明書 B型自分の説明書
Jamais Jamais 著
●文芸社 
●120P 
●ISBN 9784286032023 
●税込1,050円

田中 宥久子
 「美しさとは自分の生き方が顔に表れたもの。」
 生き方名言新書『田中宥久子』には、造顔マッサージの田中宥久子の名言がぎっしり詰まってい
ます。美容界のカリスマの言葉は、人生の道しるべになってくれました。私はまず顔のお手入れを
しっかりすることから始めようと思います。
 今、美容がブームになっているのは、「外→中→外」と自分を向上させる好循環をつくる手段とし
て有効であるからではないでしょうか。
 美容に興味がなくても、今迷っている人、答えを探している人に手にとってほしい一冊です。 (松)
田中宥久子 田中宥久子 もっとキレイになれる!きっとキレイになれる!
田中 宥久子 著
●小学館 
●159P 
●ISBN 9784093423748 
●税込1,260円

「金融初心者」へ
 『効率が10倍アップする新・知的生産術』が好評の勝間和代さん。さすがに金融の本では、「資
産10倍〜」とはいかなかったようです。と、皮肉はさておき、『お金は銀行に預けるな』とは、特に金
融初心者の方には、お節介で高飛車な感じのタイトルだな? と警戒してましたが、中身は意外と
良心的で盛り沢山でした。投資の機会損失による不利益、金融教育の必要性、住宅ローン・生命
保険の考え方、教育問題まで。要は、お金のことに無知で、かつ人任せにしないで、もっと真剣に
考えていきましょうということの再認識本です。人任せが原因という点では年金問題は最たる例な
んだろうなと個人的に思います。これを個人の責任にするのはあんまりでしょうけど、世の中確か
に無知で損をしている人は多いです。著者の「資本主義というものは、厳しい言い方をすれば、『賢
くない人から賢い人へお金が流れる仕組み』」というのは、肝に銘じるべきなのでしょう。ただ、銀行
預金は、お金に自信がない人の最善の防御策だとも思うのですが、どうでしょうか? (富)
効率が10倍アップする新・知的生産術 効率が10倍アップする
新・知的生産術
お金は銀行に預けるな お金は銀行に預けるな
勝間 和代 著 勝間 和代 著
●ダイヤモンド社 
●287P 
●ISBN 9784478002032
●税込1,575円
●光文社 
●230P 
●ISBN 9784334034252
●税込735円

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ご利用ください。
                                    

編集後記
 わたしが取り上げた赤木氏の著作は大朝日ではなく双風舎という小さな出版社から出たので、
朝日新聞社の若い編集者の大胆な企てが竜頭蛇尾に終わらないよう危惧している。