(2006年11月1日号) PDF版

主な記事から
 泉鏡花文学賞に嵐山氏  卒業してからでも遅くない世界史  『図書館戦争』『〜内乱』のゆくえ

国会でも取り上げられる「格差社会」は書店発信。新書ブームのおかげで書店の守備範囲が
ずいぶん広くなった。でも、油断は禁物!
 「格差社会」がブームである。新刊がどんどん出てくる。
 起源ははっきりしていて、橘木俊詔著『日本の経済格差』(98年)、佐藤俊樹著『不平等社会日本』(00
年)の二冊。双方とも統計を駆使した京大と東大の先生が書いた地味な本だったのが、それを引き継い
で、『希望格差社会』、『ニート』、『下流社会』、『下流喰い』と不安をあおる絶妙なネーミングのベストセ
ラーが出たおかげで、いまや日本は「超格差大国」となった。
 ついに『論争 格差社会』という便利なアンソロジーまで出て、こういった社会が抱える課題にタイムリー
に資料を提供できることは、書店冥利に尽きる。そういえば最近はテレビもドラマが減って、コメンテーター
が政治や社会について述べる番組が増えている。が、テレビではショッキングな映像を見せることはでき
るけれど、内容に対しての掘り下げは性格上難しい。
 最近のベストセラーは小説でなく、新書が多いから、活字離れにこの辺から対処できるかもしれない。
でも、「新書の販売合戦」にならないよう出版界は自戒が必要である。
 なお、わたしのお薦めは、橘木俊詔著『格差社会』(岩波新書)、高原基彰『不安型ナショナリズムの時
代』(洋泉社)。(蛙)
日本の経済格差 日本の経済格差 不平等社会日本 不平等社会日本
橘木 俊詔 著 佐藤 俊樹 著
●岩波書店 
●新書/212P 
●ISBN 400430590X 
●税込735円
●中央公論新社  
●新書/208P 
●ISBN 4121015371 
●税込693円
希望格差社会 希望格差社会 ニート ニート
山田 昌弘 著 玄田 有史 著
●筑摩書房 
●四六判/254P 
●ISBN 4480863605 
●税込1,995円
●幻冬舎 
●四六判/271P 
●ISBN 4344006380 
●税込1,575円
下流社会 下流社会 下流喰い 下流喰い
三浦 展 著 須田 慎一郎 著
●光文社 
●新書/284P 
●ISBN 4334033210 
●税込819円
●筑摩書房 
●新書/219P 
●ISBN 4480063250 
●税込735円
論争 格差社会 論争 格差社会
文春新書編集部 編
●文藝春秋 
●新書/248P 
●ISBN 4166605224 
●税込788円
格差社会 格差社会 不安型ナショナリズムの時代 不安型ナショナリズム
の時代
橘木 俊詔 著 高原 基彰 著
●岩波書店 
●新書/212P 
●ISBN 4004310334 
●税込735円
●洋泉社 
●新書/255P 
●ISBN 4862480195 
●税込819円

投資もいいけど
 「格差社会」、「下流社会」、「年収300万円時代」などと呼ばれているが、たしかに「はたらけども、はた
らけども・・・」という実感が強くなってきた気がする。
 そんな中、少しでも収入を増やすべく株ブームが起きたが、それもホリエモン騒動で一服。そのせいだ
ろうか、もう少し堅実な見直しに目が向いているようである。『医療保険は入ってはいけない!』という本
が売れてきているのである。
 保険に加入している人はたくさんいると思うが、多くの人は「なんとなく」加入しているのではないか。し
かし、仕組みをわかっていないと保険会社が儲かるだけというのが、この本の趣旨。実際、医療費100
万円のケースでも、自己負担は8万円ということもある。
 投資もいいけど、合理的な節約こそ基本であるということだ。(勇)
医療保険は入ってはいけない! 医療保険は入ってはいけない!
内藤 真弓 著
●ダイヤモンド社 
●B6判/184P 
●ISBN 4478600511 
●税込1,500円

卒業してからの世界史 
 高校で必修科目の世界史の授業がおこなわれておらず、このままだと卒業できない生徒がいることが
明らかになった。わたしが高校生の頃は、まだ世界史が必修科目でなかったが、今になって履修してお
けばよかったと思うこともある。世界史を学んでおけば、各国のニュースを、その国や事柄の背景を少し
は理解した上で見ることができるからだ。指導要領で必修となっているのには、それだけの根拠があると
思う。世界史に関連した本を二冊。                 
 『世界を見る目が変わる50の事実』
 現在の世界の話。具体的な数字をあげて取り上げられた50の事実が、人々の意識を変えると著者は
信じている。世界を変える最初の一歩はどれも厳しい。恐いと思うような内容だが、知らないより知って
いたほうがよいと思う。
 『ああ知らなんだ こんな世界史』
 イスラム圏の国を著者が実際旅した上で、日本人があまり知らない世界史のイスラム側からの断片を
まとめたもの。(万)
世界を見る目が変わる50の事実 世界を見る目が変わる
50の事実
ああ知らなんだ こんな世界史 ああ知らなんだ
こんな世界史
ジェシカ・ウィリアムズ 著 清水 義範 著
●草思社 
●B6判/269P 
●ISBN 4794214049 
●税込1,680円
●毎日新聞社 
●B6判/255P 
●ISBN 4620317764 
●税込1,470円

ライトノベルから直木賞作家を待望する
 『図書館戦争』が「本の雑誌」で06年上半期エンタメ1位になるなどで一般読者にも広汎に知られるこ
ととなった有川浩の続編『図書館内乱』が好調だ。ライトノベル以外の読者も着実に獲得しつつある。
 わたしもその一人。食わず嫌いはいけないと、おそるおそる手をつけたのだが結構いける。翌日には
『戦争』から『内乱』へとエスカレート。超法規的検閲から図書館を守るといった展開は、なかなか骨の
ある話じゃないか!と喝采。
 9/28には同著者の『レインツリーの国』が新潮社から発売になった。本書は『内乱』に出てくる架空の
本を新たに書き下ろしたもの。新潮社とメディアワークスが双方の書籍の腰巻きで紹介している。出版
社の垣根を越えたコラボ実現ということだ。
 この著者に対する厚遇をみていると、文芸版元がライトノベル界を、新しい作家の供給源とみている
のかな、と思える。ここ最近の直木賞作家がティーンズ文庫出身の女性が多かったことを考えると、次
は・・・と予想したくなる。でも、これを社内の事情通にぶつけると、審査員が変わらないとね、と諭され
た。うーん、そういえば、山本文緒、唯川恵の登場には林真理子の押しが大きかったのだ。(惚)
図書館戦争 図書館戦争 図書館内乱 図書館内乱
有川 浩 著 有川 浩 著
●メディアワークス 
●四六判/345P 
●ISBN 4840233616 
●税込1,680円
●メディアワークス 
●四六判/355P 
●ISBN 4840235627 
●税込1,680円
レインツリーの国 レインツリーの国
有川 浩 著
●新潮社 
●四六判/203P 
●ISBN 4103018712 
●税込1,260円
 ブックスなかだが予想する今後土俵を変えて活躍が期待されるライトノベル出身者は以下のとおり。
 ・有川浩 ・古川日出男 ・桜庭一樹 ・日日日 ・佐藤友哉 ・三雲岳人 ・滝本達彦 (浜)

キュイキュイとよみます
 はぁ〜たまげた、林真理子! 連載も続くと本当に綺麗になるものだね。『美女入門』6冊目の帯を見
て、しみじみ思いました。そこで以前の林真理子はどんな顔だったかな、と各出版社の文庫で著者の顔
写真をチェック。講談社、文春は写真を載せていない。角川は新装版から、新潮と集英社は載せている。
 本書の効用が気になる方はご覧あれ。(川)
美女は何でも知っている
美女は何でも知っている

林 真理子 著

●マガジンハウス 
●新書/257P 
●ISBN 4838717156 
●税込1,050円

(画像クリックで拡大)
    

金沢本店フェア
・知の再発見双書 ・歴史書懇話会 ・歴史書リバイバル ・建築を知る必読書 ・薬学書フェア
・進化論 ・手帳、日記 ・年賀状 ・奈良美智フェア ・年末調整

児童書の担当者から
おなかぺこぺこフェア
 幼い子どもたちの心に一番強く残るお話とは何だと思いますか? それはずばり”食べもの”のお話なの
です。子どもたちはいつでもおなかぺこぺこなんですね。
 特に目を惹くのは、パンやカステラ、ケーキなどの絵本。ずっと売れ続けているおいしそうな絵本の中に
は、何故か焼いたものが多いのです。
 それは、ふわふわのほくほくに焼きあがったパンたちが描かれると、香ばしい焼きたてのいいにおいが
強く思い出されるからかもしれません。(辻)
                                 

文芸書の担当者から
なぞるのに飽きたら
 本年度の泉鏡花文学賞に嵐山光三郎氏の『悪党芭蕉』(新潮社)が選ばれた。氏の旅好きはつとに有名
だが、芭蕉との出会いが根っこにあるようで、大学時代に『奥の細道』を全踏破、近年には芭蕉の旅をす
べて辿りなおす『芭蕉紀行』を刊行し、JTB紀行文学大賞を受賞している。
 実地の旅をとおして、『奥の細道』のフィクション性に気づいた嵐山氏の頭の中に、無頼の徒「悪党芭蕉」
が立ち上がってきたという。
 「俳聖」か「悪党」か? 真実をつきとめるために旅にでるのもまたよい。(そぞろ神)
悪党芭蕉 悪党芭蕉 芭蕉紀行 芭蕉紀行
嵐山 光三郎 著 嵐山 光三郎 著
●新潮社 
●四六判/263P 
●ISBN 4103601043 
●税込1,575円
●新潮社 
●文庫/381P 
●ISBN 4101419078 
●税込580円

医療小説の今
 「Dr.コトー診療所」や「白い巨塔」はフジテレビの人気ドラマだ。このドラマに共通するのは、医師が主人
公である点。
 医療を題材にした物語には、死と隣り合わせの緊迫感、患者との暖かい触れ合い、医局内の権力争い
における心理的駆け引きなど、話題に事欠かない。ドラマ、コミック、そして小説の題材としては普遍的な
テーマである。最近の注目の本は、二つ。
 一つは海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』、もう一つは霧村悠康『昏睡』だ。二作品とも、シリーズ第二弾。
前作がともに評価が高い。生死の境を行き交う緊迫した物語の底流には、ドロドロとした悪意が常に進行
している。
 どちらがドラマ、映画化になるのか、今から注目の作品である。(太)
ナイチンゲールの沈黙 ナイチンゲールの沈黙 昏睡 昏睡
海堂 尊 著 霧村 悠康 著
●宝島社 
●四六判/413P 
●ISBN 4796654755 
●税込1,680円
●新風舎 
●四六判/377P 
●ISBN 4289008119 
●税込1,890円

慣れてきた新入社員から
今は亡き狐里庵先生に恋してる。
 安倍総理が著書で『沈黙』に言及したおかげか、偶然か、遠藤周作の未発表のエッセイが見つかり出版
された。生前から悪戯好きで周囲を困惑させていた氏のことだろうから、天国で「ヒヒヒ」と笑っている気が
する。
 新書は人を思いやる、ちょっとした心遣いを書いた内容にもかかわらず、『十頁だけ読んでごらんなさい。
十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。』と狐里庵先生らしく人を食った書名だ。もっとも、編
集者がつけた書名かもしれないが、さもありなんという気がする。
 わたしが遠藤周作の作品を読むようになったのは氏が亡くなってからであるが、純文学の作品はともか
く、エッセイのほうは絶版になっているものが多くて、古本屋か図書館を探すことにしている。氏の作品は
時に鋭く、深く、時にユーモラスで人生の指針になるのだ。中でも『ぐうたら人間学』は氏の色々な顔が見
られて面白く読める。でも先輩によると、本人が書いたものより、北杜夫が書いた狐里庵先生のほうが面
白いらしいので、ドクトルまんぼうへいこうかしらん。(影)
十頁だけ読んでごらんなさい。
十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。

遠藤 周作 著
●海竜社 
●四六判/246P 
●ISBN 4759309497 
●税込1,575円

理学書の担当者から
バコールの瞳に乾杯
 宇宙や生物にみられるような、複雑な器官がひとりでに出来上がったとは考えられない創造に際して、
「高度な知性」によるデザインが必要であったという説をインテリジェントデザインというそうです。
 いつの時代にも科学が説明しきれない事の説明として、こういった考え方はあるものです。その根拠の
一つとして取り上げられるほど精密な器官に「眼」があります。確かに自然にできあがるとは思えないほ
ど精密で複雑です。しかし、とうとうここにも科学が追いつきつつあるようです。
 『眼の誕生』(草思社)で、眼の誕生と生命進化についての新仮説が紹介されています。カンブリア紀に
地球が明るくなったことが眼を誕生させ、それが生命の爆発的進化をもたらしたというのです。
 科学は全てを解き明かしてはいませんが、本書のような日々進歩する科学に触れてみれば、創造主の
出番はまだ先だと思えます。(徹)
眼の誕生 眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く
アンドリュー・パーカー 著
●草思社 
●四六判/382P 
●ISBN 4794214782 
●税込2,310円

文芸書の担当者から
文芸書担当者のおすすめ・ベスト3
 「あいつらがカンタンにくちにする30回のセックスよりも青春時代にグミ・チョコレート・パインを一回読む
ってことのほうが僕にとっては価値があるのさ。(峯田和伸)」というわけ(どういうわけ?)で、勝手に選び
ました、二十歳になる前に読みたい青春パンクな本ベスト3!
 一冊目はもちろん『グミ・チョコ〜』、これは有名すぎて言うことありません。次は『青春ノイローゼ』、あの
みうらじゅんのスウィートでセンチメンタルな自分探しの旅の記録。ディープに面白いです。なぜかサブカ
ル色が濃くなったので、最後はノーマルに感動させられる青春小説『スメル男』。原田宗典のユーモアと
ノスタルジーがかみあった裏代表作。人にすすめて、はずしたことありません。以上、大人でいることにち
ょっと疲れちゃった人にもオススメの本ベスト3でした。(淳)
グミ・チョコレート・パイン グミ・チョコレート・パイン
全6巻
青春ノイローゼ 青春ノイローゼ
大槻 ケンヂ 原作 みうら じゅん 著
●講談社
●税込 各550円


●双葉社 
●文庫/278P 
●ISBN 4575712094 
●税込580円
スメル男 スメル男
原田 宗典 著
●講談社 
●文庫/407P 
●ISBN 4061851764
●税込660円

北朝鮮と松茸
 ミサイル発射に核実験。輸出入禁止などの経済制裁の話が出て、松茸やカニ、浅蜊の不足と日本中
で沸き返っているが、われわれ北陸人は冷静にならないといけない。なぜか? 北朝鮮は北陸からだと
北海道や九州と同距離なのだ。それなのに、この情報不足は何たることか。われわれの知っている情報
といえば、週刊誌ネタばかりである。落ち着こう。
 さて、落ち着いたところで一冊。『北朝鮮クライシス』(日本経済新聞社)は日米中韓露のお国の事情も
交えての分析なので、熱くならずに日本の立ち位置が理解できる。
 松茸、カニは高いけれど国産で。(秀)
北朝鮮クライシス 北朝鮮クライシス
日本経済新聞社 編
●日本経済新聞社 
●新書/199P 
●ISBN 4532352274
●税込840円

「連載は女を美しくする」についての編集後記
 美人平均化仮説というのがあるらしい。若いときの美人度については大きな差がでるが、年齢とともに
その差が縮まり平均化するというものだ。この仮説は個性の輝きを無視した単純なものにすぎないけれ
ど、この個性が曲者なのだ。某女史の場合には、う〜ん、個性は一流です。