BOOKSなかだ掛尾本店調べ (2018年 9月10日号)

1.→
富山は日本のスウェーデン
  変革する保守王国の謎を解く
井手英策
●集英社新書 ●ISBN 9784087210446 ●本体 820円+税

 富山県は県民総生産が全国三一位の小さな自治体だが、一人当たりの所得では六位、勤労者世帯の実収入では四位に浮上する。
 背景にあるのは、ワークシェアリング的な雇用環境と女性が働きやすい仕組みだ。さらに、公教育への高い信頼、独居老人の少なさなど、まるでリベラルの理想が実現しているかのようだ。しかし、北陸は個人よりも共同体の秩序を重視する保守的な土地柄とされる。富山も例外ではない。つまり、保守王国の中から「日本的な北欧型社会」に向けた大きなうねりが起きているのだ。


2.→
昭和の怪物七つの謎
保阪正康
●講談社現代新書 ●ISBN 9784065123393 ●本体 880円+税

 私の使命は、昭和前期から無謀な戦争に突入し、悲惨な敗戦を迎えるまでの記録と教訓を、次世代に繋げることだと考えている、と筆者は言う。
 これまで40年以上にわたる近現代史研究で、のべ4000人から貴重な証言を得てきた。本書でも紹介する東條英機夫人。秘書官・赤松貞夫。石原莞爾の秘書・木清寿。東條暗殺計画の首謀者・牛島辰熊。2・26事件で惨殺された陸軍教育総監・渡辺錠太郎の娘、和子。犬養毅首相の孫娘、道子。瀬島龍三本人。吉田茂の娘、麻生和子などなど。その証言と発掘した史料により筆者は多くの評伝を書いてきたが、そこに盛り込めなかった史実からあらためて「昭和の闇」を振り返る。とくにこれまで一冊にまとめられていなかった石原莞爾については、はじめての原稿となる(初出は「サンデー毎日」)。


3.↑
マスコミ偽善者列伝
  建て前を言いつのる人々
加地伸行
●飛鳥新社 ●ISBN  9784864105972 ●本体 1,389円+税

 俗情におもねり、時流に乗りたい政治家とコメンテーターを重用する新聞・テレビの無責任、無知、無節操への寸鉄!
 東洋思想の第一人者が徒然なるまま、物知り顔の人物の真贋を見抜く痛快エッセイ。
 深刻そうに「その時だけの絶対反対」を永遠に繰り返すマスコミ人を嗤(わら)い飛ばします。


4.↑
武士の日本史
橋昌明
●岩波新書 ●ISBN 9784004317180 ●本体 880円+税

 武士は農村ではなく都で生まれた」「刀は武士の魂ではない」「戦場の馬はすべてポニー」「長篠合戦の大嘘」「主君は替えて当たり前」「武士が消えて武士道が生まれた」―
 果たして日本は「武士の国」なのか? 長年武士研究を牽引してきた著者が,歴史学の最新の成果をもとに数々の「常識」を検証,実像に迫る.



5.↑
緊急出版!枝野幸男、魂の3時間大演説
  安倍政権が不信任に足る7つの理由
筒井康隆
●河出書房新社  ●ISBN 9784309248653 ●本体 1,200円+税

 ’18年7月20日、森友・加計問題、働き方改革法案でのデータ偽造、そして公文書改ざん問題と、憲政史上稀に見る不祥事が連続し、大阪北部地震や北海道、西日本の水害までも起きた第196回国会は、’18年7月20日に実質的な最終日を迎えていた。
 そんな安倍内閣に対し、野党は共同して内閣不信任案を提出した。
 衆院で野党第一党を占める立憲民主党の代表・枝野幸男議員による内閣不信任案趣旨説明演説は、安倍政権が抱えるさまざまな問題点を指摘することはもとより、議会制民主主義とはなにか、議員内閣制とはなにか、国家とはなにか、政治とはなにかをあますところなく述べている。 
 本書は、その演説の書き起こしを、上西充子・法政大教授と田中信一郎・千葉商科大学特別客員准教授による解説とともに完全収録したものである。


6.↑
「明治礼賛」の正体   (岩波ブックレットNo.986)
斎藤貴男
●岩波書店 ●ISBN 9784002709864  ●本体 580円+税

 「明治改元150年」を記念して,政府主導により,国・自治体・民間の関連イベントが各地で繰り広げられている.
 都合よく歴史を改竄し,近代日本の帝国主義がもたらした負の側面を省みず,「明治に学べ」との掛け声のもと,国策として進められる「明治礼賛」.
 気鋭のジャーナリストがその実態を暴き,この国のゆくえを問う.



7.↑
漂砂の塔
大沢在昌
●集英社 ●ISBN 9784087711578 ●本体 2,000円+税

 北方領土の離島で発見された、日本人の変死体。
 捜査権もない、武器もない――圧倒的に不利な状況で、警視庁の潜入捜査官・石上(イシガミ)が真相を追う!
 650ページ一気読み! 怒涛のエンターテインメント!!


8.↑
江戸東京の明治維新  
横山百合子
●岩波新書 ●ISBN 9784004317340 ●本体 780円+税


 維新の激動に飲み込まれた江戸.
 諸大名の一斉帰国で人口は一挙に半減し,百万都市は瞬く間に衰退へと向かう.横行する浮浪士のテロ,流動化する土地と身分.人心は荒廃し怨嗟の声があふれる.江戸の秩序が解体してゆく東京で,人びとは時代の変化に食らいつき,生き延びる道を求めて必死にもがきつづけた.
 名も残らぬ小さき人々の明治維新史.



9.↑
絶滅の人類史
  なぜ「私たち」が生き延びたのか
更科功
●NHK出版 ●ISBN 9784140885413 ●本体 820円+税

 700万年に及ぶ人類史は、ホモ・サピエンス以外のすべての人類にとって絶滅の歴史に他ならない。彼らは決して「優れていなかった」わけではない。むしろ「弱者」たる私たちが、彼らのいいとこ取りをしながら生き延びたのだ。常識を覆す人類史研究の最前線を、エキサイティングに描き出した一冊。


10.↑
信長はなぜ葬られたのか
  世界史の中の本能寺の変
安部龍太郎
●幻冬舎新書 ●ISBN 9784344985056 ●本体 820円+税

 戦国時代は世界の大航海時代だった。
 スペインやポルトガルは世界中で植民地獲得に乗り出し、その波が鉄砲やキリスト教伝来という形で日本にも押し寄せていた。織田信長はこれにどう対処するかという問題に直面した、わが国初の為政者だったのだ―。
 安土城跡に発見された「清涼殿」の意味、スペインからの使者・イエズス会ヴァリニャーノとの熾烈な交渉、そして決裂。その直後に本能寺の変は起きた…。江戸の鎖国史観から見ていてはわからない、世界史における本能寺の変の真実。信長が背負っていた真の孤独とは。